自転車を電車に乗せ、アムステルダムからデンハーグまで向かう。
タクとユウガは各車両に分かれ、目的地までボーっとしながら座席に腰かけていた。
(楽だなぁ・・・)
車窓から見える景色は自転車に乗っているときより早く流れる。自転車で9時間かかる距離を2時間で行ってしまう。電車を発明、運用に貢献した人達はなんと素晴らしいことか。
自動ドアの開く音がしたと思うと、右側から車掌がやってきた。いつも通りの乗車券確認だ。
ヨーロッパでは改札や窓口がないところが多いので、そのまま電車に乗れることがある。
タクは乗車券を見せたが、車掌が解さない様子だ。
乗車券の目的地は間違っていないはずだ。
「どこまでいくの?」
「デン・ハーグ」
「自転車を乗せるなら追加料金を払わなければならないよ」
(?!)
そんなことは知ったこっちゃない。ここで追加料金を払うのも嫌だったので、タクはとりあえず知らないふりをした。
「そんな事聞いてもいないし、知らない」
車掌に何回も言われても、その言葉を返し続けた。
すると、車掌はあきらめたのか、すんなりと次の車両に移って行った。
あきらかに外見がアジア人の旅行者であるタクを大目に見てくれたのかはわからないが、とにかく行ってしまったのである。
(あー、よかった・・・)
旅行者にとって、思わぬ出費が痛い。
デンハーグの駅で合流したユウガにその事を話してみると、
「そんなこと言われませんでしたよ」
「マジで?」
どうやらユウガは自転車を放置したまま別の場所に座っていたらしい。
タクの自転車はスタンドもなければ、荷物の取り外しが面倒なので、その場に居合わせていた。
ともあれ、なにごともなくてホッとした瞬間だった。
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